認知症は表出化する症状と原因の関係が多様であるため,認知症当事者の認知的視点を理解するスキルが重要であり,ナラティブの経験的イメージの補完が必要である.本研究では,認知症当事者のナラティブを基に,患者体験(PX)をVRで体験することが可能なPX体験プラットフォームを構築し,その有用性を検討した.本プラットフォームは,多様な認知的障害を一人称視点で体験し,障害や環境をコントロールする機能や多人数で空間を共有する機能があり,認知的な活動を健常者と比較しながら体験することが可能である.一般市民に対して活用した結果,学習者同士が共有することで認知症の理解に繋がる可能性や,認知症当事者が体験することによって認知的活動の理解を深めていけることが示唆された.